耳をすませば

あの名作『耳をすませば』が、実写映画として新たな感動を届けてくれます。中学生だった月島雫と天沢聖司が大人になり、それぞれの夢と現実に向き合う――本作は、原作アニメの“その後”を描いた、切なくも温かな青春×成長の物語です。

主人公・天沢聖司を演じるのは松坂桃李さん。バイオリン職人になる夢を追い、イタリアへ渡った青年の葛藤や孤独、そして大人になったからこそ抱える不安を、繊細かつ力強く表現しています。言葉少なな佇まいの中ににじむ感情は、「夢を追うことの美しさ」と「現実の厳しさ」を同時に感じさせ、観る人の心を静かに揺さぶります。

一方、山田裕貴さんが演じる杉村竜也は、本作で重要な存在感を放つキャラクター。雫を想いながらも想いが届かなかった過去を持ち、それぞれの道を歩み始めた大人たちの“もうひとつの選択肢”を体現します。山田さんならではの誠実で人間味あふれる演技が、物語にリアリティと深みを与えています。

本作の最大の魅力は、「夢を叶えた人」だけでなく、「夢と現実の間で立ち止まる人」にも優しく寄り添ってくれる点です。若い頃に思い描いた未来と、今の自分とのギャップに悩んだことがある人なら、雫や聖司の姿にきっと自分を重ねてしまうはず。成功だけが答えではない、迷いながらも前に進む姿が、そっと背中を押してくれます。

また、あの名曲「カントリー・ロード」が物語の要所で響き、懐かしさと新鮮さを同時に感じさせてくれるのも大きな魅力。美しい街並みや夕焼けのシーンと相まって、観終わったあとには静かな余韻が心に残ります。

『耳をすませば』は、青春映画でありながら、大人になった私たちのための物語。かつて夢を語ったすべての人に、「今の自分も悪くない」と思わせてくれる一作です。
原作ファンの方も、初めて触れる方も、きっと心に残る時間になるはず。ぜひ、静かな夜にじっくり味わってほしい映画です。